【天の雷・地の咆哮】
怖い、と言いつつも、彼女たちの会話はどこか他人事で、
そのことについて深く考えをめぐらせるものは一人もいない。
すぐに話題は、女性特有の噂話へと移った。
「そういえば、あの話聞いた?」
二人の少女が、野菜を運びながら体を寄せ合う。
「聞いたわよ。
ユピテロカ王が神官に無理やり御子を産ませたせいで、
神の怒りを買っているって話でしょう?
なんでも、雨が少ないのはそのせいで、天が罰を与えているとかって」
「あら、私は違う話を聞いたわよ。
なんでもヴェローナ様は、神をも恐れず神殿に押し入った無法者に乱暴されて
マルス様を身ごもったとか」
「まぁ、それ本当?」
思わず歩みを止めた少女は、暗く不幸な内容に一瞬不快感をあらわにしたが、
すぐに、初めて聞く噂話に興味津々で目を輝かせた。