【天の雷・地の咆哮】
ルクスの一族は--それはつまりニュクスの一族に当たるわけだが、
中央では強い支配権を持ち、代々王の相談役として発言権を握っている。
いまや、王妃の親族としてゆるぎない座を築いた彼に、
正面から反対意見を述べようなどというものは皆無だった。
・・王はどうするつもりだ。
アニウスは瞬き一つせず、ロカの全身に神経を集中する。
無論、きちんと庇うつもりなのだろうな、と彼なりの圧力をかけながら。
しかし、ロカは何を考えているのか、いや、何も考えていないからか。
あっさりとルクスの意見を採用した。
「ルクスの言うとおり、マルスはしばらく城から出そう。
この話はそれで終いだ。
それより、もっと具体的な報告をしろ。
備蓄している食糧がどれくらいあるのか、このままいくと、食料はどのくらい足りなくなるのか。
どれほどの民が餓死する?」
ロカの問いに答えようと、臣下の一人が立ち上がったとき、
「お待ちください!」
アニウスの震える声が、議場を揺らした。