【天の雷・地の咆哮】
「だ、誰だ!!」
ケレスはいったんは腰に戻していた剣を、再びふりぬき構える。
それにならうように、盗賊の男たち全てが剣を構えて警戒した。
声がしたのは空の方角からだ。
だが、人どころか鳥の姿さえない。
「どこにいやがる!出て来い!」
ケレスが怒号をあげる。
ニュクスは地面に倒れ込んだまま、このぴりぴりとした空気を肌で感じていた。
と、青々と葉が茂る一本の木が、風もないのにカサリと音をたてた。
全員が一斉にその音の方角に目をやる。
ケレスは手下の男に片手を振った。行けという合図だ。
数人の男がその木の周りを囲んで上を見上げたとき。
「そこに何かあるのか?」
さっきと同じ低い男の声がした。
音がした木とはまったく正反対の、全員の背後から。