【天の雷・地の咆哮】

「わかりました。すぐに支度を」


ヴェローナは特に取り乱すこともなく、平然と答える。


むしろ、用件を伝えに来た侍女の方が平静さを失っているようだった。

その証拠に、侍女はもう一つの大事な用件を伝え忘れそうになり、

いったん背を向けてから、もう一度戻ってきた。


「あ、あの!それから、お二人の護衛として、

現在王の護衛を勤めているホーエンという騎士が来るそうです」


「えっ!」


ヴェローナの肩が、ぴくりと上下する。


「それは、王のご命令ですか?」


「はい、そう聞いておりますが。

何か、不都合がございますか?」


いいえ、わかりました、と答えたヴェローナの声は若干上擦り、

長い髪がぱさりと顔を覆った。

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