【天の雷・地の咆哮】
まるで天を見上げるほどの巨体によって、アニウスの足元はすっぽりと影に覆われる。
頬に傷こそあるものの、それは、少年の頃の面影を宿したアニウスのよく知る人物だった。
「ホーエンじゃないか」
「お久しぶりでございます」
ヴェローナの許婚だったホーエンに、彼女が神官にになったことを告げたのは、
ほかならぬ自分だ。
その時の、ホーエンの驚愕の顔と、がっくりと落とした肩を思い出して、
アニウスは後ろめたい気分になり、目をそらした。
「何か、用か」
「ユピテロカ王がお呼びです」
「王が?何の用だ?」
「存じません。間違いなくお伝えしましたので、失礼いたします」
ホーエンは用件だけを伝えると、そっけなくアニウスの前を通り過ぎる。
急に光の中に引き戻され、アニウスはまぶしさに目を閉じた。
やっとのことで薄目を開けると、ホーエンははるか先を歩いている。