【天の雷・地の咆哮】
・・だからといって、私のほうがより多く愛されているって訳ではないでしょうけど。
『ニュクス・・・』
耳元で低く囁かれれば、全身が毒におかされたように痺れて、何も考えられなくなる。
優越感にも似たその感情にふたをして、ニュクスは目の前に押し寄せる快感の波に身を任せた。
***
「ほんと、もっと心の強い人間にならなければ」
「はぁ」
何のことだと言いたげなニナの力のない声に、
ニュクスは自嘲気味に笑みを浮かべたが、後ろを歩くニナには見えなかった。
・・ヴェローナが、あれほど控えめな性格でなければ、
嫉妬に狂った私が追い出していたかもしれないわね。
子どもが産まれるまで、表面上はニュクスの侍女であったヴェローナは、
文句一つ言わず、くるくるとよくよく働いた。
お腹が大きくなってからもそれは変わらず、
いつ怠け者の本性を出すのだろうと思っていたニュクスの予想を完全に裏切ったのだった。