【天の雷・地の咆哮】
その素直な態度は、ニュクスの敵対心を削ぐには充分だった。
どう歪んだ解釈をしても、おとなしく質素なヴェローナは、
とても自分から男を手玉に取るようには思えなかった。
時々、遠くを見つめるような悲しい色を宿すヴェローナの瞳。
ニュクスはその真意を問いただしたことはなかったが、
彼女もまた、自分と同じように悲しみに耐えているのではないかと思えた。
そう思った瞬間から、ニュクスにとって、ヴェローナは恋敵ではなく仲間になったのだろう。
そして、ロカもまた不思議な人間だった。
何人の女性に愛されても、不思議と憎むことができない。
何をやっても、やんちゃで、彼なら仕方がないと思わせる何かを備えている。
それは、穏やかで、奇妙な三角関係だった。
「寒っ!なんだか、急に冷え込むようになりましたねぇ」
突風が二人の体に襲い掛かると、ニナが身震いして首元の衣を握った。
「そうね。はやく城の中に入りましょう」
カサカサと音を立てながら、たくさんの枯葉が、風の手を取り舞い踊った--。