【天の雷・地の咆哮】
「次の飢饉に備え、乾燥や長雨に強い穀物の開発に努めてはいかがでしょう。
また、非常用の倉を増設し、さらなる備蓄もすすめるべきです」
アニウスの発言に、全員がなるほどと同意したが。
「確かに良い案だが、その費用をどうする?先の飢饉で国に余分な予算はない」
金の話になると、誰もがうつむいて黙り込んだ。
「ここにいる皆様で、分担して出してはいかがでしょう。
幸い、心配された疫病もなんとか防ぐことに成功し、ここまでは広がりませんでしたから、
皆様の財産はさほど目減りしておりませんでしょう」
アニウスの明朗な回答に、一瞬にして議場は紛糾した。
「何を言っている!民を助けるためと言って、備蓄してあった食糧を提供したんだぞ。
財産が減っていないなどと、ふざけるな!」
「その通りだ!私も我が家の貴重な森林を切り倒して、まきを提供したんだ!」
「おや、木なんぞ、すぐにいくらでも生えてくるではないか」
「なんだと!木を切ってまきにするのに、どれだけの人手が必要だったと思っている!
そいつらの賃金は、私が払ったのだぞ!」