【天の雷・地の咆哮】
やがて、時は流れ--。
それは、深く冴え冴えとした月が、地上の全てをいたわる様に空にあった夜半のこと。
ウェスタの城では、いつもなら暗いはずの部屋に煌々と灯りが灯されていた。
「ロカ様。おめでとうございます!
姫君が御生まれになりましたよ。ニュクス様ともども、ご無事です」
ニュクス付きの侍女であるニナが、興奮状態でロカの前に姿を現した。
「そうか」
ロカは瞼をおろし、わずかに息を吐いた。
・・ニュクスに女が産まれたのも、運命、か?
「ヴェローナはニュクスのところにいるのか?」
ニュクスの労をねぎらう言葉よりも先に、ロカの口からヴェローナの名前が出たことに、
ニナは明らかにむっとした顔になる。
「はい。ニュクス様の出産の間、ずっと隣の部屋に控えておいででしたから」
王子が産まれるかどうか、見張っていたのに違いない。
ヴェローナがニュクスを心配する様子を、ニナはそんな風に思っていたし、
ニナ以外の侍女の誰もが、一見気のあう二人の妃の仲を、あれこれと邪推していた。