【天の雷・地の咆哮】
いったんは城から出されたヴェローナとマルス。
しかしつい先日、再び城へと呼び戻されていた。
ニュクスが妊娠中だったこともあり、城の中ではさまざまな憶測が飛び交った。
それはもちろん、次代の王は誰か、という一点に絞られており、
アニウスが王を抱きこみ、マルスを跡継ぎに据えるつもりらしい、
というものだったり、
王がニュクスの正妃の座を剥奪して、ヴェローナを正妃に据えるつもりだ、
といったものだったりした。
いよいよ、アニウスかルクスのどちらにつくかをはっきりしなくてはならない。
そんな雰囲気が流れていたため、姫君誕生の報を聞いた貴族たちは、
皆一様に複雑な表情を浮かべた。
『ニュクス様のお産みになったのは姫君だそうだ』
『では、アニウスの権力はまだまだ揺らがぬということか』
『一体、二人のどちらにつけば安泰なのだ』