【天の雷・地の咆哮】
アニウスに敵対心を持つ貴族の多くは、ニュクスが王子を産む事を切望している。
ウェスタでの継承順位は、正妃の産んだ子どものほうが上だ。
ニュクスが王子を授かりさえずれば、たとえアニウスがどんな手を使おうと、
アニウスを恐れる必要はない。
迷わずルクスの側につける。
しかし、ロカが相変わらずアニウスを重用していることに加え、
ニュクスが王子を授からなかった場合に備え、影でこっそりとアニウスにごまをする者も多かった。
飢饉以来、アニウスは積極的に発言し、自身が切れ者であるということを証明していたこともあり、
ルクスに見切りをつけ、若いアニウスの側に回るものもいた。
そして、そんな城の内外の声は、おしゃべり好きな侍女を通して簡単にニュクスの耳に届く。
子どもを産む前から、“必ず王子を産むように”という目に見えぬ重圧が、
いたるところでニュクスを縛り付けていた。
だが、産まれたのは女。