【天の雷・地の咆哮】
すやすやと眠る産まれたばかりのわが子の隣で、
ニュクスは子どもを産んだ大きな喜びと、先の見えぬ小さな不安を胸に、疲れた顔をして寝台に座っていた。
「ニュクス様。少しお休みになってください。たいそうお疲れのご様子です。
姫様のことなら、心配要りませんわ。私もおりますし」
ニュクスの髪をとかしながら、ヴェローナが優しく声をかける。
「ありがとう、ヴェローナ。
でも、マルス様は大丈夫なの?あなたがいなくて泣いているんじゃなくて?」
「あの子も3つになりますから。近頃では私がいなくても長い間侍女と遊んでおります」
「3つ。そう、もうそんなになるのね」
ニュクスは話すのも億劫な様子だったが、体を横にしようとしない。
ふと気づいて、ヴェローナは尋ねた。
「もしや、王をお待ちですか?」
ニュクスははっとしたように体を揺らすと、わずかに紅潮して長い睫を伏せる。
その様子を見て、ヴェローナは、ふっと微笑んだ。