【天の雷・地の咆哮】
「大丈夫ですわ。王はニュクス様の事を心から愛してらっしゃいますもの。
寝台に横になっていても、みっともないなどと考えたりするわけがありません」
それに、と言いながら、
ヴェローナは、小さな寝台で眠る赤ん坊をいつくしむような瞳で眺めると、
「こんなにかわいらしい姫君を産んでくださったのですもの。
きっと嬉しくて、ニュクス様に今以上に感謝なさいますわ」
まるで夢見る少女のように、ほぉ息をはいた。
ヴェローナの言葉には、憎しみも嫌味も織り込まれてはいない。
それがわかっていても、いや、わかっているからこそ、ニュクスは複雑な気持ちになった。
「ロカ様は、きっと何の関心も持たないわ。そういう人だから」
自分に会いに来るわけがない。
ヴェローナが子どもを産んだときでさえ、見舞いにも行かなかった男だ。
それでも、もしや、と万に一つの期待を抱いて、身支度を整えたまま待っている自分が、
惨めに思えた。