【天の雷・地の咆哮】
年月がすぎても、ロカの態度には相変わらずなんの変化もなかった。
特に邪険に扱われた覚えはない。
話せば笑顔を見せるし、かつての約束どおり、こうやって子どもも与えてくれた。
一方的にヴェローナの元へ通うということもなく、どちらかと言えば同じ城にいた自分と過ごす時間のほうが長く思える。
ただ、彼は決して本心を見せなかった。
心を許しているようで、ある一定の領域からは決して踏み込ませない。
そんな感じに思えた。
ニュクスには、それが辛くてさみしかった。
彼を知れば知るほど、理解が増せば増すほど、ニュクスは彼の愛が欲しくて堪らなくなった。
時間をかければ。子どもを産めば。
彼の愛を何とか得られるのでは、そんな風に期待をしていたけれど、
それはやはり都合の良い夢物語だったようだ。
「少し、休みます」
ニュクスはヴェローナに背を向けるようにして寝台に身を沈めた。
その時。
「なんだ。寝ちまったのか」
いつもの陽気な声だった。
それこそ、子どもを産んだばかりの妻を気遣うような、そんなものではなかった。