【天の雷・地の咆哮】
うそだ、とニュクスは思った。
心臓が締め付けられて、痛いくらいに収縮を繰り返す。
「まだお眠りではございませんわ。御用があれば、お言いつけください」
去っていく足音が聞こえたかと思うと、入れ替わるように人の近づく気配がする。
「どうした?なんでこっちを向かないんだ?
亭主の声を聞き忘れたか、それとも後ろから襲って欲しいのか?」
ロカにすれば気の利いた言葉のつもりだった。
はいはい、と呆れ顔で頷かれるか、誰がそんなこと望むものか、と怒り出すか。
いつもの、夫婦の挨拶。
それなのに--。
ニュクスは背を向けたまま、身動き一つしない。
「ニュクス?」
やはり寝てしまったのかと思い、ロカはニュクスの肩に手を置いた。
力を入れて体をひっくり返そうとすると、抗われる。
・・なんだ?
いつもと違うニュクスの様子に、ロカはさすがに心配になった。