【天の雷・地の咆哮】
まるで幼子のように自分の胸に顔をうずめるニュクスを見て、
ロカの心に愛しさがこみ上げる。
それは、ニュクスに対して初めて芽生えた、遅すぎる感情だった。
「なんだ。赤子を産んで母親になったと思ったのに、時が後ずさりしたか?」
口調も声音も、今までと何の変わりもないように思えたが、
そっと肩を撫でるロカの掌が温かくて、ニュクスはロカの背に手を回してしがみついた。
「ロカ様」
「ん?いきなり“様”付けか。なんか尊敬されるようなことをしたっけな」
ロカのとぼけた言い回しがおかしくて、ニュクスはうっかり吹き出す。
「本当に、あなたは最低です。こんないい女を泣かせて」
「あぁ」
「大嫌いです」
「あぁ。
知ってる・・・」
吐息を吐くようなロカの言葉が、寝台の隅に、ぽつりと落ちた。