【天の雷・地の咆哮】
一陣の風が吹き、梢をゆらして通り過ぎる。
「おい、小僧。痛い目が見たいのか?」
「ん~?痛いのは好きじゃない。本当は面倒なのも嫌いなんだ。
あんたらが、とっとと引き上げてくれれば余計な労力使わないですむんだがな」
ふざけているのか本気なのか、少年の口調は相変わらずだ。
ケレスのこめかみに一本の青筋がたった。
「とぼけたガキめ!俺たちをなめたらどうなるか、思い知らせてやる。
おいっ!!」
少年の態度にむかっ腹が立っていた若い男が、ケレスの命令を待っていたとばかりに、
いの一番に少年に向かって剣を振り上げた。
「このガキがぁっ!ふざけやがって!」
男が飛び掛った瞬間、ドスッ、と鈍い音がした。
ニュクスは息を詰めて目を閉じ、盗賊たちは少年の血しぶきが飛ぶのを想像して笑んだ。