【天の雷・地の咆哮】
ドタン、バタン。
派手な音をたてる寝台の上には、幼い男の子が横になっている。
元気いっぱいに寝相の悪さを披露しているその子どもに近づくと、
ヴェローナははだけた布団を、そっと直してやりながら笑んだ。
・・マルス。どうか心の強い子に育ってね。
ニュクス様と産まれた女の子を、優しく守って差し上げてね。
安らかな寝顔に話しかけると、ヴェローナの顔がわずかに歪む。
己の犯した罪がどれほどに深いのかはわからないが、
この子はいつの日か、その全てをかぶることになってしまうに違いない。
そう考え、なんど誘惑に負けかけたことだろう。
“死”
それは、ひどく魅力的で甘美な響きだった。
この子と共に、逝こう。
そう決意して井戸に身を投げたはずが、今は一国を背負う中心の渦にある。
・・皮肉なものね。