【天の雷・地の咆哮】
ぐらり、と盗賊の男の体が傾いだかと思うと、ドスンと大きな音を立てて地面に倒れた。
乾いた土ぼこりが舞いあがり、そしてゆっくりと地面に沈殿していく。
その場にいた誰もが、一体何が起こったかを理解できなかった。
盗賊の刀のさびにされ倒れるはずの少年は、相変わらず木に寄りかかったままだ。
仰向けにまぬけな姿をさらす盗賊の男は、白目をむいて口から泡を吹いている。
その様子からみれば、盗賊の男が少年の手にかかったのは明らかだ。
しかし、その場にいた誰もが、目に映る二人の関係と現実を受け入れることができなかった。
辺りの空気が、真冬のように凍りついた。
「あ~あ。だから言ったのに。
コレスだっけ?全員こうなる前に帰ってくれないか?」
少年は、いかにも面倒そうな声を上げる。
「“ケレス”だ!!」
「あぁ、悪い!
この場は見逃してやるから、ケツまくって帰りな、“カレス”!」
ケレスの顔が、見る間に赤く染まっていく。
今にも煙が噴出しそうだ。
どけ!、と手下に声を張り上げると、ケレスは長い剣を握りなおし、外股に重い体重をかけながら足を進めた。