【天の雷・地の咆哮】
・・くっそぉ!ケレスのやつめ!この俺を、こけにしおってぇ。
白髪の目立つ頭をした男が、一気に酒をあおった。
すでに太陽が高い位置に昇っているのに、締め切った部屋は薄暗い。
かなりの時間を酒とすごし、相当に酔っ払っていたため、
男はすぐ背後に、息子が立っていることにすら気づかなかった。
「父上、末期の酒の味は、いかがですかな?」
突然降りかかった予期せぬ息子の台詞に、男は口にした酒をゴホ、っと吐いた。
「お前、アニウスではないか。
しばらく顔を見せなかったと思ったら、突然何をしに来た」
まったく親不孝者が、などとぶつぶつ呟いて、
アニウスの父、カークスは、再び杯を酒で満たす。
「何をしにきたか、お分かりではありませんか?」
「なんだ、頭でも下げにきたか。
今更あやまったところで、父を追い落とすような息子に用はないわ」
自らを省みる事を知らぬカークスに、アニウスは目を閉じ、息を整えると。
腰に佩いた剣をすらりと抜いて構えた。