【天の雷・地の咆哮】

悲鳴を予測していた盗賊たちでさえ、鼓膜が破れるかと思うほどの、甲高い叫び声が上がった。

敏感な動物たちはすでにその場を去った後だったが、

心の臓の弱い者ならば、その音だけでころりと死んでしまうのではないかというほどの声。


ぬるりとしたものが顔に飛び散り、ニュクスは瞼を閉じた。

指先で拭ったそれが血であることがわかって、ニュクスは気を失いかけた。


気を失ってはだめだ。


何度も自分にいい聞かせ、ニュクスは闇に沈みかける意識を必死で現実に繋ぎとめた。



・・確かめなくては。



これが、“どちらの”血なのかを。


「うわあああ!うわあああ!」


断続的に聞こえる、この世のものとは思えない恐ろしい悲鳴。

それをあげている男の顔を、ニュクスは震えながら確認した--。




< 18 / 214 >

この作品をシェア

pagetop