【天の雷・地の咆哮】
悲鳴を予測していた盗賊たちでさえ、鼓膜が破れるかと思うほどの、甲高い叫び声が上がった。
敏感な動物たちはすでにその場を去った後だったが、
心の臓の弱い者ならば、その音だけでころりと死んでしまうのではないかというほどの声。
ぬるりとしたものが顔に飛び散り、ニュクスは瞼を閉じた。
指先で拭ったそれが血であることがわかって、ニュクスは気を失いかけた。
気を失ってはだめだ。
何度も自分にいい聞かせ、ニュクスは闇に沈みかける意識を必死で現実に繋ぎとめた。
・・確かめなくては。
これが、“どちらの”血なのかを。
「うわあああ!うわあああ!」
断続的に聞こえる、この世のものとは思えない恐ろしい悲鳴。
それをあげている男の顔を、ニュクスは震えながら確認した--。