【天の雷・地の咆哮】

『ヴェローナを幸せにしてやりたいんだ』


ニュクスには、はっきりとそう聞こえた。


あぁ、そういうことなんだ、と妙に得心がゆく。


この男は、どこまでもヴェローナのために、ヴェローナのためだけに尽くすつもりなのだ。



・・マルス様に王位を譲る気なのね。



ニュクスに男の子ができないため、彼女の一族が王に若い妃を贈る画策をしている事を、

ニュクスは知っていた。


彼女の一族だけでなく、アニウスの後に続けとばかりに、

あの手この手で己の娘を城にあがらせようとしている貴族は後を絶たない。


もともとアニウスの一族は、庶民より格段に富んでいるとはいえ、

数ある貴族の中で言えば、さほど上位に属しているわけではなかった。

つまり、正妃に男児がいない以上、誰にでも次の王を産む機会があるということだ。

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