【天の雷・地の咆哮】
「ねぇ、ロカ?」
ニュクスは一瞬上目遣いに流し目を送ったあと、すぐに心の奥底までこじ開けられるほどの鋭い目つきになった。
「あなた、狂王を演じていたのは、今日の日を予期してのこと?」
「俺は、世間の言うとおり、狂ってるだろ?
王位を捨てて出て行くと言ってるんだから」
ロカの目が、子どものようにきらきらと輝く。
・・やはりそうなのね。
なぜ政に興味がないふりをするのか。
なんのために、アニウスとルクスを競わせ、それぞれに権力を与えるのか。
「アニウスとルクスの二人に政を取らせ、
いざって時には、王がいなくても何とかなるようにしたのね。
お互いが、お互いを牽制しあうように」
「さて、俺はそんなこと考えてないぜ?
ただな、有能なやつがやれることをやればいい。そしたら、俺が楽だからな」
ロカは、にやりと唇を吊り上げたが、
その瞳はすぐに悲しみとも切なさともわからぬ色に染まった。