【天の雷・地の咆哮】
ユピテロカ王失踪の報せは、またたく間に城内を駆け巡った。
驚いたことに、城の重鎮の誰もがロカが行方をくらましたことについて、
事前に何の情報も手に入れてはいなかった。
『一体、どういうことだ!』
『まさか戻ってこない、などということはあるまいな!』
『やはり狂っている。最初から王の器ではなかったのだ』
王が不在とあっては、国の存続に関わる。
マルスを王位につけることに反対する者も、もはや己の立場がどうのと言ってはおれなくなった。
5日間の討論の末出した結論は、アニウスが後見役としてたち、
マルスを王とする、というものだった。
それが、ロカの狙い通りだったのかどうか、
今となっては誰にもわかるはずがなかった。
突然の王の代替わりに、狂王は国を憂う忠臣によって討たれたなどという噂が、
まことしやかに流れた。