【天の雷・地の咆哮】
・・そうだわ、ニナ!
ニュクスは、首をめぐらせる。
とうの昔に気を失ってのびている侍女--ニナは地面に放り出されたままだ。
すぐさま駆け寄ろうとしたが、どうにも下半身に力が入らない。
歩けば数十歩の距離を、芋虫のようにずりずりとはいずり進んでいく。
はぁ、と少年がついたため息は、夢中なニュクスの耳には届かなかった。
「なぁ」
「私は、なぁではありません」
「ニュクス」
「なれなれしく呼ばないでと言ったはずです」
少年は眉をばらばらに動かすと、ぼりぼりと頭をかいた。
「きゃあ!」
突然、少年はニュクスを赤ん坊を縦抱きするように抱えあげた。
ニュクスは急に高くなった視界に、足をばたつかせる。