【天の雷・地の咆哮】
・・正妃にするといいながら、ニュクスを正妃につけ、
今度はヴェローナを見捨てるとは!
アニウスにとって、国など二の次だった。
ただ、愛する妹を守ってやりたい、その一心だった。
ロカに協力し国を支えれば、必然、ヴェローナも幸せになる。
それは、彼女を神官にする事をとめられなかったことに対する、
彼なりの罪滅ぼしであった。
病が直接の原因とはいえ、ヴェローナが、ロカの失踪、マルスの即位と、
神経をすり減らしたのは、傍目に見ても明らかなことだった。
慟哭。
握り締めたアニウスの拳は、長い時間、そのまま開かれることはなかった。
一人の人間の死が、
彼女を悼む人々に影響を与える。
そして、その波紋は、
ゆっくりと、だが確実にこの国の根幹を腐らせていった。