【天の雷・地の咆哮】
『心配しなくても、アニウス様とルクス様がいるから、ウェスタは安泰でしょ。
狂王に比べれば、年若いマルス王の方がよほどましに違いないわ』
いつだったか、侍女たちがそんな話をしていた事を思い出して、
男は顔をしかめた。
・・前王に比べれば、マルス王の方がまし、か。
しかし、人々がそう思うように仕向けた人間が、実はユピテロカ王だと知れば、
皆、どう思うかな。
わざと目立つように遊び歩き、
その影でアニウスとルクスが政を二分するよう配慮し、
綺麗に去っていったロカ。
運良く王になり、運良く臣下に恵まれ、運良く国をつぶさずにすんだ。
傍目にそれが単なる幸運としか映らないのは、
彼がどう見ても真面目な人間には見えない様、振舞っていたからに過ぎない。