【天の雷・地の咆哮】
ヴェローナの亡骸は、王族としてウェスタ神殿で3日3晩の祈りを捧げられた後、
荼毘に付された。
ウェスタの巫女が一同に集まり、神官長を中心に祈りの言葉を唱える。
巫女見習いの少女たちは、その場に居合わせる事を許されてはいないものの、
各自で集まり、先輩の巫女たちを真似て、熱心に祈りを捧げていた。
「どうしたの?」
その中にいる一人の少女の様子を心配して、隣に座る少女が小さく声をかけた。
少女の碧の瞳からは大粒の涙があふれ、床に滴り落ちている。
「ん、お母さんが亡くなるなんて、王様かわいそうだよね」
少女はあふれる涙を拭いもせず、胸の前に組んだ両手に力を込めた。
「そうだね。私たちは、せめて一生懸命お祈りしてあげよう」
涙で頬に張り付いた黒髪を、慰めを口にした少女がそっと指でつまむと、
黒髪の少女は、こくりと頷いた。
・・王様が、幸せになれますように。