【天の雷・地の咆哮】
右腕を押さえ、狂ったように目を血走らせたケレスの、断末魔のような叫び声が耳に残る。
それは、喜ぶべき光景なのか、それとも忌むべきものなのか。
ただそれが、尋常なものでないことだけは、世間知らずなニュクスにもはっきりと理解できた。
ニュクスの頭は一瞬にして真っ白になり、目を閉じることさえできず、
ケレスがのた打ち回るのをただ黙って見ているしかなかった。
盗賊の長をやっていたということは、それなりに周囲を認めさせるだけの力を持っていたはずだ。
その男が、赤子の手をひねられるように、
しかも自分たちよりも若い少年にあっさりとやられたことで、盗賊たちは戦意を喪失した。
ひぃひぃと喚くケレスを馬に乗せると、彼らは一目散に退却した。
“覚えていろよ”の捨て台詞を吐くだけの余裕すらないままに。
ただの肉塊と化した腕が、剣を握ったままなのを見て、ニュクスは今更ながらにぞっとした。