【天の雷・地の咆哮】

ウェスタ国。


大陸の中ほどに位置するこの国は、王を中心とした中央集権的な政治形態を持つ。

そのウェスタ国の城で働く一貴族の子息、アニウスは、父から呼ばれた部屋で眉間にしわを寄せた。


「馬鹿な!何かの間違いではございませんか?」


父の話が、にわかには信じがたく、アニウスは聞き返した。


「いや、確認したが間違いではない。

ラトナは妊娠している」


アニウスの父は右手の掌で額を多い、深いため息をついた。

ラトナというのは、アニウスの年長の妹で、今年16歳になる娘だ。


彼が驚いたのは、ラトナが未婚というだけの理由ではない。


「ラトナはウェスタの神官に志願したのですよ!

妊娠などすれば、極刑に処せられます!」


アニウスの台詞に、父は黙り込んだ。


< 26 / 214 >

この作品をシェア

pagetop