【天の雷・地の咆哮】
ウェスタ国。
大陸の中ほどに位置するこの国は、王を中心とした中央集権的な政治形態を持つ。
そのウェスタ国の城で働く一貴族の子息、アニウスは、父から呼ばれた部屋で眉間にしわを寄せた。
「馬鹿な!何かの間違いではございませんか?」
父の話が、にわかには信じがたく、アニウスは聞き返した。
「いや、確認したが間違いではない。
ラトナは妊娠している」
アニウスの父は右手の掌で額を多い、深いため息をついた。
ラトナというのは、アニウスの年長の妹で、今年16歳になる娘だ。
彼が驚いたのは、ラトナが未婚というだけの理由ではない。
「ラトナはウェスタの神官に志願したのですよ!
妊娠などすれば、極刑に処せられます!」
アニウスの台詞に、父は黙り込んだ。