【天の雷・地の咆哮】
自分の父親でありながらも、アニウスは本気で彼が出世すると思っていなかった。
父が浅慮で凡庸な男であることは、まだ若いアニウスでさえ感じるところだ。
おそらくラトナは、この父親に一番似たのだろうと、アニウスは思っていた。
父自身も、自分の能力の限界を良く分かっているに違いない。
だからこそ、どうしても娘を神官にし、自分の出世へ一縷の望みをかけたのだ。
その希望が打ち砕かれて、憔悴している父を、アニウスは哀れに思った。
ところが。
「ラトナが戻ったら、代わりにヴェローナを神殿へやるつもりだ」
「なんですって!?」
父の言葉に、アニウスは今日初めて心からの動揺を覚えた。
・・ヴェローナを、だとぉ!