【天の雷・地の咆哮】
ニュクスの歓迎の宴が華やかに始まったのは、夕刻を少し過ぎてからだった。
「ユピテロカ王子。こちらがニュクスでございます」
ニュクスは己の名をウェスタ国の王子に紹介され、俯いたまま深々と首をたれた。
「初めまして。ニュクスでございます」
「ようこそ、ニュクス。ユピテロカだ。頭を上げて」
どこかで聞いたような声だ、と思ったものの、ニュクスはそれが誰なのか思いだせず、
緊張の面持ちで頭をあげた。
とたん。
「げっ!」
無意識に飛び出した言葉を引っ込めるには、すでに遅すぎた。
「げ?」
周囲の誰もが、怪訝そうにニュクスの顔を窺う。
「げ、げげ元気そうでいらっしゃいますね。ユピテロカ王子」
なんとか作り笑いをしてみたが、頬の筋肉が自分の意思とは別に、ひくひくとひきつった動きをしている。
自分ではどちらかといえば、器用な人間だと思っていたニュクスは、
生まれてこの方感じたことがないほどに、心臓の鼓動が高まった。