【天の雷・地の咆哮】
・・な、なんでロカがこんなところにいるのよ!!
心の中でロカの名を呼んで気づく。
ユピテ、ロカ--ロカだ。
もう二度と会うまいと思っていた命の恩人に、まさかこんなところで会うなんて。
いや、まさか、彼がこの国の王子だったなんて。
プッとユピテロカが吹き出したことで、彼も自分のことを気づいているのだとわかったが、
彼はニュクスの緊張など意にも介さぬ風で、彼女の手を取ると、
そのまま甲に唇を寄せた。
・・なっ!
何するのよ!、という言葉は、今度こそ飲み込んでその場をしのいだ。
「お美しい方ですね、ニュクス。
それに、結構気が強かったりしますかね?」
ユピテロカはニュクスの手を握ったまま、にやりと笑いかける。
隣に並ぶと、それほど低くないニュクスよりも頭一つ以上の身長差がある。
軽く睨みあげ、ニュクスはユピテロカだけに聞き取れるように、小さく呟いた。
「よくご存知でいらっしゃいますのね。
王子も実は、軽口でふらふらと遊び歩いては、ならず者と剣を交えたりしてらっしゃるのでは?」