【天の雷・地の咆哮】
あははは、という豪快な笑い声が広い部屋にこだまして、
ロカを困らせてやろうとしたはずのニュクスが、かえって焦ってしまった。
「ちょ、ちょっと、あなたねぇ!」
ロカの袖を引いて、笑い声を止めようとするが、彼はなれなれしくニュクスの肩を抱くと、
それこそ笑いの神にでもなったかのように腹を叩いた。
どうやら、ロカがニュクスのことを気に入ったようだと曲解した人々は、
若い二人のやり取りに目を細める。
ニュクスを王子に紹介した男も、これで一仕事終えた感がめいいっぱい漂っており、
ニュクスは複雑な心境になった。
表面上はロカとニュクスの顔合わせだが、実質は婚約披露のようなものだ。
宴席は当然、二人が隣になるよう設けられ、他の者は少し離れたところに座っている。
食事や酒が次々に運ばれると、立ち上がったロカが口を開いた。
「父王ネプトからの伝言だ。今日は皆、思う存分楽しむように。
というわけで、
飲むぞ~!!」
ロカが杯を上げると、取り巻く周囲の人々が、一斉にわ~と歓声と拍手を送った。
ただ一人、ロカの最も近くで彼を観察しているニュクスと、
遠目から彼らを眺めて値踏みしているアニウスを除いて。