【天の雷・地の咆哮】
・・こ、こんな男が次代の王で大丈夫なの?
ギャハギャハとうるさい男たちの下品な笑い声と、女たちの色艶のついた耳障りな高い声。
それをたしなめるどころか、率先して騒いでいるロカ。
城の中の豪奢な一室が、まるでどこかの酒場のように感じられてニュクスは眉を寄せた。
不意に、ニュクスは自分に向けられた鋭い視線に気づいた。
目が合うと、一瞬で逸らされてしまったが。
・・あれは、どなたかしら。
部屋のお祭り騒ぎの空気に混じることもなく、やけに無遠慮な視線を投げる男が宴の隅の席に座っている。
年の頃は自分と同じくらいだろうか。
こんな男が王宮にもいるのだと、ニュクスは新鮮さを覚えた。
「どうした、ニュクス?
あまり楽しそうじゃないな」
杯を片手に、ロカはニュクスに声をかける。
「いいえ。あなたの王子らしくない様子が間近で拝見できて、光栄ですわ」
嫌味のつもりで吐いた言葉だ。
もちろんそんなことにロカが動じるはずもないという計算の元で。
それなのに。