【天の雷・地の咆哮】
夜も更けた頃、ニュクスは、ばか騒ぎという名の歓迎の宴を後にして優雅に辞去した。
自分の屋敷はこの王宮からさほど遠くない場所にある。
王宮の中にも部屋が用意されていたが、家に帰りたいと言うニュクスの願いが通り、
王がつけた護衛とともに、城を出た。
自分の部屋に戻り一人きりになると、一気に緊張が体から抜け落ちて、
ニュクスはへなへなと床にしゃがみこんだ。
・・夢でも見ているんじゃないかしら。
やっとの思いで床についたものの、目が冴えて眠れない。
体は睡眠を欲しているのに、脳内で変な切替え装置が働いたようで、
目を閉じるといくつもの光景が思い描かれて、逆に物思いにふけってしまう。
思えば、この数週間の間に、人生の一生分もの内容を体験した気がする。
突然、ユピテロカ王子の妃候補に名が挙がり、盗賊に襲われ、王宮にあがり。
・・とにかく眠らなくては。明日考えればいいことだわ。