【天の雷・地の咆哮】
プッと男が小さく笑った気配がする。
ニュクスはむっとして起き上がると、部屋の入り口にかけてある篝火(かがりび)を取って
寝台の枕元、男が中腰になっている場所にかざした。
男の顔がこうこうと照らされる。
闇になれた男は、その灯りを見るなり眉間にしわを寄せたが、
すぐにくったくのない笑みを浮かべて、ニュクスを眺めた。
「ごきげんよう。ニュクス。一人寝とはさびしい夜だな」
瞬間、ニュクスの眉間に深々と縦皺が刻まれた。
「夜中に女性の寝室に忍び込むとは、いい度胸ですね。
ロカ」
ロカ。
敬称どころか、尊敬の念の一部も含まれない呼び方に、ロカはますます嬉しそうに唇を吊り上げる。
「別にいいじゃないか。どうせ夫婦になるんだ」
「それとこれとは別問題です」
夜中にどこかの夜盗のようにこっそり部屋に侵入するなど、ニュクスだけでなく誰が見ても非常識な行為だ。