【天の雷・地の咆哮】
とはいえ、ニュクスには別段それを強固に拒否する理由もなかった。
ユピテロカ王子に必ず気に入られること。
そう一族から至上命令を突きつけられている身からすれば、
夜中に部屋に忍び入られるというのは、この上なく光栄な出来事といえよう。
妃として迎えると確約を受けたようなものだ。
労せず任を果たした自分は、幸運な人間、のはずなのである。
が。
「で?何の用です?」
なぜか、そっけなく話をふってしまう。
そんなニュクスの態度に怒ることもせず、むしろきらきらと光る目をしてロカは尋ねた。
「用って。男が夜中に女の部屋に来る用っていったら一つじゃねぇの?」
「そうは思いません」
「なんでだ?」
「あなたが私を見る目は、女としてではありませんから」
言葉にしてから、そうなのか、とニュクスは気づいた。
ロカが自分を見る目は、他の重臣たちに向けていたのと同じ目。
女としてではなく、物として役立ちそうかどうか推し量る目。
それが自分を苛立たせている。