【天の雷・地の咆哮】
ロカの視線に応じることができず、ニュクスは視線をそらした。
沈黙がおりる暇もなく、ロカは突然立ち上がると、ニュクスの腰を引き寄せた。
「俺の妻になれば、不幸になる。その覚悟があるか」
一瞬にして、ロカの瞳が恐ろしい野獣のように変化した。
犬だと思って手なづけていたら、実は狼だったという風に。
「一体何のことです?」
「俺は、欠陥品なんだ。人を愛する事を知らない。
だから俺に愛を求めれば、お前は不幸になる」
「何を馬鹿な事を」
・・そう。馬鹿な話だ。
まるで、私が自分を愛するような口ぶりで。
ニュクスは、ロカの上目線に腹立たしさを覚えた。
相手が王子とはいえ、対等な立場での政略結婚のはずなのだ。
「私たちは、お互い利害関係の下に結婚するのでしょう。
あなたは、今まで関係の薄かった私の一族を後ろ盾に王の座につく。
私は跡継ぎを産み、私の一族を繁栄に導く。
愛などという感情が割り込む隙が、どこかにありますか?」