【天の雷・地の咆哮】
ロカはそのまま部屋の窓を開けると、そこからすぐ傍の木に手を伸ばした。
「んじゃ、またな、ニュクス!
俺の妃が、あんたみたいな女でよかったよ」
さわやかな声音だけを残し、ロカの姿は闇の中へと消えていく。
さようならの声をかけることもできず、ニュクスは呆然とその場に立ち尽くした。
『あんたみたいな女』
それは、しっかりした姉さん女房という意味だろうか。
それとも--。
ニュクスはしばらくそこで、その言葉の真意を心の中で問いただした。
なんだろう。
何かが違ってしまった気がする。
歯車の一つが、わずかにずれてしまったような、そんな予感。
一つだけいえることは、世間の評価はあまり当てにならなそうだということだった。
・・少なくとも、狂ってはいない。
ロカが開けた窓から、冷たい夜風が流れ込んで、ニュクスは思わず自分の体を抱いて身震いした--。