【天の雷・地の咆哮】
『あれからもう半年になるというのに、ユピテロカ王子はいつ妃を迎えるのだ』
『それが、どうもネプト王の病状が思わしくないらしく、
先延ばしになっているらしい』
『他の貴族連中も、その間に自分の娘をなんとか妃にと攻勢をかけているらしいが』
『なんにしても、もはや跡継ぎがユピテロカ王子しかいないのだから、
早くなんとかしてほしいものだな』
巷の噂というのは、街に行かないでも自然と耳に入るものだ。
ニュクスは今日も、長いため息をついた。
・・まったく、いつまで宙ぶらりんのまま放っておくつもりかしら。
明日にも結婚、と騒がれた数日後、ウェスタ国の王であるネプトが倒れ、
二人の婚儀は延び延びにされていた。
おそらく、ネプトの具合は前々から良くなかったのだろう。
だからロカを中央に呼び寄せ、結婚も焦って整えられた。
ニュクスの一族は、中央ではそれなりに力を持つ貴族だ。
後ろ盾のないロカのために、急遽取り繕われたというのが、本当のところらしい。