【天の雷・地の咆哮】
・・この格好。下級神官か。
ロカは女の衣を見てそう判断すると、顎に手をやり考え込んだ。
神殿に連れて帰ることは簡単だ。
神官長に口止めし、他の人間に見つからない間に女の部屋まで運んでおけばいい。
だが。
・・なんのために、井戸から身を投げたのか、だよなぁ。
ロカはもう一度、神経を尖らせて周囲に気を配った。
やはり、人の気配は感じられない。
誰かに投げ入れられたのかとも思ったが、女の体には傷つけられた様子も見えなかった。
となると。
・・自ら、身を投げた、か?
ロカは、首をひねった。
確かに、ウェスタの巫女は戒律の厳しい辛い場所だと聞いている。
だが、一般庶民から成る巫女と違い、貴族出身の娘はある程度優遇されているはずだ。
自ら死を選ぶほどの出来事など、果たしてあるのだろうか。