【天の雷・地の咆哮】
・・参ったなぁ。今忙しくて、女にかまけている場合じゃないんだけどな。
だからといって、打ち捨てていくわけにもいかず、
ロカは仕方なく女を抱き上げると、自分の部屋へと歩き始めた。
ロカはこの城で産まれたものの、物心ついた頃には母はなく、国境の最前線へと送られていた。
おそらく、王は彼を国境を守る責任者として育てるつもりだったのだろう。
国境を守備する兵士たちにはならず者も多く、ロカが第5王子だというだけで彼に反発を持つものも少なくなかった。
必然的に、彼は剣の腕を磨き、己の命を己で守らねばならぬ状況で大きくなった。
この歳まで生き延びてこられたのは、ロカが王子であったからではなく、
彼が持って生まれた才能を駆使し、それを磨き上げる努力を惜しまなかったからであろう。
そして今、上の4人の兄たちが不幸にも次々に命を落とし、ロカに予想外のお鉢が回ってきたのだが、
そういった身の上のせいで、彼にはこの城で頼れる人間が一人も浮かばなかった。