【天の雷・地の咆哮】
・・確かウェスタの巫女は、男との接触を禁じられてるんだよな。
ってことは、男に頼むってわけにはいかないんだよなぁ。
女の知り合いなんて、遊女くらいしか思いつかないし。
ん?女の知り合い?
瞬間的にロカの頭の中に、一人の女の姿が思い浮かんだ。
放置したまま今の今までろくに思い出しもしなかった、美しい婚約者の顔。
・・そうだ!そうすりゃ、いいじゃねぇか。
俺ってやっぱり、いい男だな。
ロカは、自分の腕の中で静かに呼吸している女にそっと目を向けた。
一向に目覚める気配はない。
薄闇でよくは見えないが、なんとなく美人に見える気がする。
満面の笑みが浮かんだロカの表情を、天上の月が静かに照らした。
彼らが運命の出会いを果たした事を、この時誰も気づいてはいなかった--。