【天の雷・地の咆哮】



・・確かウェスタの巫女は、男との接触を禁じられてるんだよな。

ってことは、男に頼むってわけにはいかないんだよなぁ。


女の知り合いなんて、遊女くらいしか思いつかないし。

ん?女の知り合い?



瞬間的にロカの頭の中に、一人の女の姿が思い浮かんだ。


放置したまま今の今までろくに思い出しもしなかった、美しい婚約者の顔。



・・そうだ!そうすりゃ、いいじゃねぇか。

俺ってやっぱり、いい男だな。



ロカは、自分の腕の中で静かに呼吸している女にそっと目を向けた。

一向に目覚める気配はない。

薄闇でよくは見えないが、なんとなく美人に見える気がする。


満面の笑みが浮かんだロカの表情を、天上の月が静かに照らした。


彼らが運命の出会いを果たした事を、この時誰も気づいてはいなかった--。




< 57 / 214 >

この作品をシェア

pagetop