【天の雷・地の咆哮】
ニュクスたちが到着すると、すぐに城の奥にある立派な広い部屋へと通された。
そこは、ロカの部屋ではなく、王子妃のために準備された場所であることは、
案内の侍女から聞かされた。
美しい装飾品に飾られたその場所で、ロカが待っているのかと思いきや。
・・やっぱりロカは来ないのね。
当人は不在で、ニュクスと歳のかわらなそうな、どこか憂いを帯びた女が出迎えた。
「あなたは、どなたです?」
ニュクスは、初めて見る女に声をかけた。
質素な雰囲気だが、目鼻立ちのはっきりしたかわいらしい女だ。
自分より、いくつか年下に思える。
「は、はい。ヴェローナと申します」
もちろん、ニュクスの侍女になる者で、と挨拶が続くのだと思ってのことだったが、
その女は、腰を折って頭を下げ名前を名乗っただけで、言葉を終えてしまった。
「あなた、失礼ではありませんか?
こちらは、ユピテロカ王子妃になられるニュクス様ですよ。
王子はどちらにいらっしゃるのです」
痺れを切らしたニナが、ニュクスの前に進み出る。