【天の雷・地の咆哮】
「い、いえ、申し訳ございません。
あまりに立派なお支度だったので、驚いてしまって。
あの、お手伝いいたします」
ヴェローナは、頬を桃色に染めるとニュクスにぺこんと頭を下げ、
せわしなく働く人々の中に慌てて紛れ込んだ。
・・なんだか、かわいらしい感じの方ね。
部屋に荷物を運び入れてきた何人もの侍女に混ざり、荷解きを手伝うヴェローナを見て、
ニュクスは柔らかな笑みを浮かべた。
妹がいれば、きっとこんな感じなのだろう。
多分、ロカが伝え忘れただけでヴェローナは自分の侍女になるのだろうと、
ニュクスは思った。
彼女なら、歳が近く話し相手にもなりそうだし、退屈な城での生活が少しは潤いそうだ。
たまにはロカも、気の利く事をする。
いまだ姿を見せない自分の夫に思いをめぐらせ、ニュクスの頬が緩んだ。
それが、ただの幻想に過ぎないのだと彼女が思い知るまで、そう長い時間はかからなかった。