【天の雷・地の咆哮】
明け方まで降り続いた雨がやむと、木々の間を潤していた雫が朝日を受けてきらきらと反射する。
一睡もできなかったニュクスは、いつもどおりの時刻に現れたニナを、
上半身だけ起こしたまま、寝台の上で気だるげに眺めた。
おはようございます、と挨拶を告げたニナは、
ニュクスの顔を見たとたん、すぐに他の侍女たちを部屋から下げた。
「ニュクス様。何かございましたか?
お顔の色がすぐれませんが」
はれぼったい瞼が全てを物語っていたが、ニナはあえて直接的な物言いはしなかった。
「ううん、なんでもないわ。
今朝は、その」
一拍間をおいて、節目がちにニナを見やった。
「ヴェローナの姿が見えなかったけれど、どうかしたの?」
いないことにほっとしたながらも、やはり気になる。
一方、ヴェローナの名前が出たことに、ニナは少なからず動揺を覚えた。
「ニュクス様。
ひょっとして、ヴェローナのことをお気に病んで泣かれておられたのでは?」