【天の雷・地の咆哮】
はっとしてニナを見つめ返すと、ニナはニュクスにまで聞こえるほどの大きな音で息を吐いた。
「お耳に入れまいと思っていたのですが、やはり人の口に戸は立てられないものです」
ニュクスは上掛けを握り締め、慎重にニナの話に耳を傾けた。
少しずつ高い角度で部屋に差し込む光が、窓の形の影をかたどる。
「城の中での噂は、相当のものなのでしょうね」
誰からも何も聞いていたわけではなかったが、さも全てを知っている風を装って、
ニュクスはニナの言葉を誘導した。
「そりゃあ、そうですわ。
ウェスタの神官であったヴェローナの元へ、こともあろうに王子が忍び込んで子どもを孕ませるなど、
前代未聞の醜聞でございますから」
・・神官ですって!?
思わず声を上げそうになったが、毛布の影に半分顔をうずめてやり過ごす。
目を見開いたニュクスの様子には気づかず、ニナは、まくしたてるように話し始めた。