【天の雷・地の咆哮】
「ロカ様もロカ様です。
いくらニュクス様がお優しいからといって、何もご自分の愛人の世話をニュクス様にさせなくても。
大体、ヴェローナの家は、常識がない一族なのでございます。
神官だった姉も在職中に妊娠し、還俗したとか。
きっと性悪女に違いありませんわ。ロカ様は騙されておいでなのです」
自分の仕える主が軽く扱われ、ニナも相当怒りを溜め込んでいたのだろう。
話し始めると徐々に興奮して、己の気持ちを一気に吐き出した。
「ロカ様は、ヴェローナを妻にお迎えになるおつもりかしら」
「まさか!彼女の一族は、落ちぶれ貴族で、家は傾きかけているそうですわ。
政(まつりごと)で重職につけないので、娘を神官長にしようとたくらんでいたに決まっています。
ひょっとしたら、王子を誘惑するように、言い付かってきたのかも!!」
鼻息を荒くするニナを前に、ニュクスはかえって冷静さを取り戻した。
・・おかしな話だわ。
確かに神官を王子の妻にするなど、例がないことかもしれないけれど、
だからといって、どうして私に預けるのかしら。
還俗して、家に帰せばすむことなのに。