【天の雷・地の咆哮】
ウェスタ国民の精神的支えは、このウェスタ神殿の信仰にある。
いくらロカが地方育ちとはいえ、そのことを知らないはずがない。
・・どうしても城に連れてこなければならない理由でもあったのかしら。
実家と疎遠になっているとか。
姉妹が続けて還俗すると、確かに評判は悪いでしょうけど、娘が罪人になれば親にだって都合が悪いはずだし。
「ねぇ、ニナ」
寝台から降りて立ち上がると、ニナがはい、と返事をした。
「ヴェローナに会いたいのだけど、こっそり探してみてくれないかしら」
ニュクスの言葉を誤解したニナが、生き生きとした瞳になってこぶしを握った。
「そうですわ。姫様!
ここは一つ、格の違いを思い知らせてやりましょう!」
ニュクスは苦笑いすると、凛とした声音で言葉を足した。
「文句を言うわけではないわ。彼女に訊きたい事があるだけよ」
ヴェローナとはあくまで主従の関係で、ろくに話もしていなかったが、
そろそろこの宙ぶらりんな立場を改めて、本当のことを教えてもらおう。
自分には、その権利があるはずだ。
期待とは違うニュクスの返答に、ニナは口を尖らせたまま軽く頭を下げた。
澄み渡った高い青空に、うつむいたまま部屋を下がるニナが気づくことはなかった。